『あのさ、夏祭り行こうぜ!』


夏祭り?とみんなの声が重なった。


『そうそう、夏祭り! ちょうど今週の土日であるんだよ。俺らぶっ倒れたせいで開門祭は全然楽しめなかっただろ?』


開門祭は、社の創建日に合わせて一週間程度行われるお祭りだ。

私たちの学舎がある"まねきの社"は毎年、六月の頭に行われている。


妖も人も楽しめるお祭りで、たくさんの屋台が並び旅芸人も来て演劇なんかも行われる。

まねきの社に伝わる神話を神職たちが舞う「神話舞」には、私も初日の午前の部だけ参加した。

それ以降はあの事件のせいで気を失ってしまい、参加出来ていない。


目が覚めた日に、せっかく推薦してもらったのにやり遂げることが出来ず申し訳なさで胸がいっぱいになり、巫女舞の富宇(ふう)先生や一緒に舞台に出た先輩、聖仁さんや瑞祥さんに泣きながら謝った記憶は新しい。


思い返せば本当に怒涛の日々を過ごしたんだな、と今となってしみじみ思う。