「巫寿が思う以上に、辛いことが沢山あると思う。生易しい世界じゃないよ」
「分かってる。でもみんながいるから。友達も、先生も、お兄ちゃんも」
そう言えばお兄ちゃんは、馬鹿、と小さく呟いて私のおでこと自分のを重ねた。
「怪我しないでね」
「……うん」
「無理しないで」
「うん」
お兄ちゃんは小さく息を吐いて私のおでこを弾いた。
「……分かった。大切な人を守れるだけの強さを、しっかり学んでおいで」
ありがとう、という声は涙で掠れて、きっとお兄ちゃんには届いていない。
その代わりにその背中を強く抱き締めた。