自分を中心に清浄な風が強く吹いた。柔らかなその風は私たちを包み込み、牛鬼の体を鋭い釜のように貫いた。


断末魔のような悲鳴が廊下に響き、咄嗟にお兄ちゃんが私の体を抱き締める。

その時、


「あははっ、ごめんごめん。お待たせしました〜」


呑気な声が廊下に響き、息つくまもなく祝詞が奏上される。

瞬きした次の瞬間、目の前の牛鬼の首がごとりと廊下を転がった。



あまりにも一瞬の出来事に私とお兄ちゃんは目を点にしてお互いの顔を見る。

「薫先生!」と慶賀くんの泣きそうな声ではっと振り返れば、私服に着替えた薫先生と顔を真っ赤にして息を切らす来光くんがいた。


薫先生は素早く祓詞を唱えて、白い光が牛鬼を包み込む。光の粒となった牛鬼の体は空気中に溶けていった。