十分後には十数人の病院のスタッフ達が旧病院前に集まった。
祭壇の前に薫先生、その後ろに私たち、最後尾にスタッフ達がずらりと並ぶ。
こほん、と咳払いをした薫先生はまたよそ行きの顔になって首をめぐらせた。
「それでは、ただいまより井戸埋立清祓の儀を執り行います。皆様、ご静粛にお願いします」
ひそひそと話す声が止んで、虫の鳴き声が響いた。
井戸埋立清祓の流れはまず修祓、祓詞奏上と神主による大麻祓いが行われる。
祓詞は私たちにもできるので、薫先生に合わせて奏上する。
祓詞を奏上する薫の声はやはり木琴の音色のような深みがあって美しい。それでいて芯があって、どんなに騒がしい場所でもよく通った。
自分の声もあんなふうに深く響けばいいんだけれど、と耳を済ませながら思う。
降神の儀、献饌、祝詞奏上、清祓の儀、玉串奉奠と順調に進み、昇神詞が奏上されると、全員の深い一礼で儀式は滞りなく終了した。
仕事だからという理由はあるにしろ、真面目に神主の仕事をこなす薫先生が珍しすぎて私たちは逆になんだか落ち着かなかったけれど。