薫先生の先導で私たちは建物の外に出た。私と泰紀くんで確認した裏口の祠までやってくると足を止めて振り返る。
「今みたいな条件の時にもう一つ確かめなきゃいけない事があるんだけど、それが"もう一柱の神様"の存在だ」
「もう一柱? でも御祭神さまは新しい病棟に移ってるだろ?」
「その通り。でも家に関する神様は御祭神だけとは限らないんだよ」
嘉正くんと慶賀くんがポケットからメモとペンを取り出してスラスラとメモを取り始める。
慌てて鞄の中を漁っていると、後で見せるねと来光くんに耳打ちされて小さく拝む。
「学校に戻って次の授業で詳しく説明するけど────例えば台所には火之迦具土神、窓には志那都比古神、クローゼットには納戸神……他にも数え切れないくらい沢山神様がいらっしゃるわけね」
「そんなに家ん中いたら狭くね?」
「あはは、確かに。満員電車状態かもね」
けらけらと笑った薫先生は「こっち」と私たちを手招いた。
裏口から少し外れた人の手入れが行き届いて居ない草の生い茂る場所へ来ると、「これ見てみ」と薫先生は何かを指さす。
慶賀くんと泰紀くんは薫先生が指さした所に積もった落ち葉を払い落とす。
「あっ」
姿を現したそれには見覚えがあった。