「別の学校に転校することになったの」

「何でだ? 引っ越すにしても、神修は全寮制だから関係ないだろ。なら兄ちゃんの看病か?」

「ううん、違うよ。ただもうこれ以上、お兄ちゃんに心配かけたくなくて」


つま先を見つめる。


「巫寿はそれでいいのか?」


泰紀くんが私の手首を掴んだ。


「でも、最後は私が決めた事だし」

「なら何でそんな泣きそうな顔してんだよ。全然"大丈夫"な顔してねぇじゃん」

「でもいいの、私は大丈夫だか────」

「そうじゃだろ」


そう言われて言葉が詰まった。


「巫寿は本当に大丈夫なのか?」


やめてよ、なんで。そんなの今更なのに。

私が決めた事だ、納得して私が最後に「辞める」とお兄ちゃんに伝えたんだ。


なのに、なのに────。



「────嫌だ」


口に出せばもっと辛くなるのに。

でも。



「やだよ、嫌だ。辞めたくなんかない……ッ」


もし心の底から諦めがついているなら、「最後に」なんて言い訳してここには来なかった。

きっと自分から、退校の話を薫先生に伝えていた。


でも出来なかった。

最後まで出来なかった。



私の中でそう簡単に諦めれるものじゃなかったからだ。