「────あれ!? 巫寿じゃん!」


お兄ちゃんの退院が明日に迫ったある日、面会時間が終わって急ぎ足で病院の中を歩いていると、玄関口で声をかけられた。

はっと振り向くと、慶賀くんが「久しぶり!」と私に手を振った。

傍にはみんなが居て、洋服姿の薫先生もいる。


驚いて目を見開いた。


「みんな────どうして……」

「本庁にこの病院のお祓いの依頼が来たから、薫先生が依頼を受けるついでに詞表現実習の課外授業をするんだって」


嘉正くんがそう答えて薫先生を見上げる。悪びれた様子もなく「元気だった?」と楽しそうに笑った。


「にしても、巫寿の兄ちゃんってこの病院だったんだな。体調はどうなんだ?」

「えっと……明日、退院できるの……」

「良かったじゃん! じゃあそろそろ学校にも戻って来そうなのー?」


それは、といい籠もる私に、薫先生が口を挟む。


「積もる話もあるだろうけど、それはまた後でね。そろそろ約束の時間だから行くよ〜」


はーい、と声を揃えた皆は裏口へ向かって歩き出す。