その話題には振れないように心配をかけないように、お互いに空元気なのは分かっていたけれど私たちは笑って過ごした。
学校に戻らなくなって皆からは「お兄ちゃんの看病、無理するなよ」と連絡が来た。薫先生は皆にそう伝えてくれているらしい。
毎日代わる代わる、黒板やノートやプリントの写真が送られてくる。
嘉正くんの無駄のないスッキリしたノート、慶賀くんの落書きとミミズ線だらけのプリント、みんなの優しさが嬉しいのに、お礼のメッセージをまだ遅れないでいる。
送られてくるノートは毎日は写して、巫女舞の練習も欠かさず続けた。
神修を辞めることは自分の意思でで決めたはずだ。
二学期からは別の学校へ転校する、神修での勉強は役には立たない、頭の中ではそうわかっているはずなのに毎日勉強は続けた。
「────じゃあお兄ちゃん、また明日来るね」
洗濯物をまとめてトートバッグに詰め込むと、小説を読んでいたお兄ちゃんにそう声をかけた。
「あのさ、巫寿。別に毎日来なくてもいいんだよ? その……巫寿のこと信じてるし」
やっぱりお兄ちゃんは初めのうちは私が学校に戻ってしまうんじゃないかと心のどこかで思っていたらしい。
そんな気はしていたし、だからこそお兄ちゃんに安心して欲しくて毎日来ていた。けれどお兄ちゃんの体が心配で来ていたのも事実だ。