学校には通いたい。心の底からそう思っている。
まだまだ勉強したいこともある。友達もできた。自分の弱さを知ってやっと目指したい姿が見えてきたところだ。
確かに「学校に通うな」というのはお兄ちゃんの考えであって、私の考えではないかもしれない。
でもお兄ちゃんがそう言うのは、お母さんたちの遺言を守って、私のことを心配して守りたいからこそそう言ってくれているのもよく分かっている。
私に残されたたった一人の家族、両親が残した想い。私にはその言葉を蔑ろにはできない。
言葉を詰まらせる私に、薫先生は電話の向こうでふっと笑う。
『ま、よく考えな。それで、どうしようもなくなったら薫センセイを頼りなさい。あはは』
そういった薫先生に思わず笑ってしまう。
『何笑ってんのさ』
「だって……薫先生も禄輪さんと同じこと言うから」
『やっぱり弟子は師匠に似るんですねとか言ったら怒るよ?』
「えっ! 薫先生の師匠は禄輪さんなんですか!」
驚いて思わずそう声をあげれば、薫先生は「あれ聞いてないの?」と意外そうに言った。
禄輪さんからは何も聞いてない。
ただ「知人で信頼のおける人」だとは聞いていたけど、まさか師匠だったなんて。
玉じいが禄輪さんの師匠で、禄輪さんが薫先生の師匠で……私の知らないところで沢山の繋がりがあることに少し不思議な気分だった。