「巫寿は父さんと母さんに託された、希望なんだよ。俺に唯一残された宝物なんだよ。だから全部隠してたんだッ!」
布団の上にお兄ちゃんの涙がポタポタと落ちた。
「頼むよ……お願いだから、この界隈に来るな。巫寿も失ったら……俺はッ!」
掴まれた腕が痛い。痛いほどに気持ちが伝わってくる。
振りほどくことが出来ない。
力を入れようとした瞬間、お兄ちゃんとの思い出が走馬灯のように脳裏を過ったからだ。
「……もうあの学校には行かせない。巫寿は普通の生活を送るんだ」
自分の力について知りたかった。お父さんたちが歩んできた道を見てみたかった。
何よりも大切な人を守れるだけの強さが欲しかったんだ。
けれど私がそうすることで、その守りたかったはずの人たちを悲しませてしまうの?
それならば私は、どうすればいいの。