お兄ちゃんが私の腕を掴んで私を見上げた。
赤くなった目元には雫が溢れそうになっていた。
「巫寿を守るためだよ! 本庁に巫寿が生まれた届けを出さなかったのもこの界隈から巫寿を隠すためだ! 巫寿が傷付かないように、苦しまず生きていけるように!」
入学手続きをする時に、薫先生が言っていたことを思い出した。
『巫寿って兄ちゃんは卒業生なんでしょ? てことは、兄ちゃんの祝寿は届けが出されてる……なのに何で本庁には巫寿の名前は登録されてないんだろうね』
神修に通学するためには日本神社本庁に名前を登録する必要があるらしい。
力の有無に関わらず、力を持つ神職から生まれた子供たちは親が生まれて直ぐに本庁に名前を登録しているのだとか。
その時はよく分かっていなくてなんとも思わなかったけれど、そういう事だったんだ。
お父さんやお母さんは、わざと私の名前を登録しなかった。