点滴を入れ直してもらって、少しだけ落ち着いたお兄ちゃんに「禄輪さんを呼んで」と言われて電話をかけた。

仕事があると言っていた禄輪さんは十コール目でやっと電話に出た。


事の経緯を説明すれば「今すぐ行く」と言って電話を切った。


重い気持ちで病室に戻ると、お兄ちゃんが硬い顔で私を見上げる。


「直ぐに……来るって……」

「分かった」


気まずさに視線をさ迷わせていると、お兄ちゃんが困ったように眉を下げて笑った。


「立ってたら疲れるよ。座りな」


そう言って立てかけられたパイプ椅子を指さす。

久しぶりに聞いたお兄ちゃんの優しい声に、少し泣きそうになりながら頷いた。



言葉通り、待たずして禄輪さんは病室へやって来た。

厳しい目をしたお兄ちゃんは「外で待ってなさい」と禄輪さんを睨みながら言った。


でも、といい籠もる私に禄輪さんは「大丈夫だ」と微笑んで私の背中を押す。

後ろ髪を引かれる思いで病室の外に出た。


せめてもと、ドアのすぐ隣の壁に立つ。