「ごめんごめん。今終わ────」


いつも通りの笑顔で顔を上げたお兄ちゃんの表情が私を見て強ばったのが分かった。

私と言うよりも、私の制服を見ていたように思えた。


「巫寿……その制服……」


目を見開いたお兄ちゃんが震える声でそう言う。


「あ……そうなの。私いま、神修に通ってて。お兄ちゃんも初等部までは通ってたんだよね? 覚えてるでしょ?」


へへ、と笑って肩をすくめる。

次の瞬間、お兄ちゃんはバンッとサイドテーブルを強く叩いた。


その大きな音に思わず目を瞑った。


「お、お兄ちゃん……?」

「────誰の入れ知恵だ」

「え?」

「誰から神修の事を……誰から父さんと母さんの話を聞いたんだッ!」


お兄ちゃんが声を荒らげる姿を小学生ぶりに見た。

小学生の時に友達と遊んでいて帰りが遅くなって心配をかけた時に怒られて以来だ。


何か言わなくちゃ行けないのに、驚きと困惑で上手く言葉が出てこなかった。

お兄ちゃんが手を伸ばして私の両肩を強く掴んだ。

カシャン、と点滴のスタンドが倒れる。


「お、お兄ちゃん……」

「誰から聞いたんだ! 力のことも、母さん達のことも、一体誰からッ!」