禄輪さんに言われた通り、まず玉じいの家によって用意してくれていた荷物を受け取った。
制服姿の私を見て少し険しい顔をした玉じいを不思議に思って聞き返したけれど、玉じいは小さく首を振って私の頭をぽんと叩いた。
グラタンは時間がかかりそうなので、お見舞いのお花だけを買って電車に乗る。
乗り換えももどかしくて、駅の中を走る。
花束に顔を埋めて、ふふと笑みをこぼした。
今日は怒られないように、早足でとどめて病院内を急ぐ。
病室の扉も昨日よりもうんと丁寧に開ける。
そっと覗き込むとどのベッドもカーテンが閉められていて、ふぅと息を吐いた。
一番奥のベッドに歩み寄り、薄緑色のカーテンをそっと開けた。
「お兄ちゃん……? 起きてる?」
「おー、巫寿」
ベッドに深く腰かけてサイドテーブルを引き寄せ、眉根を寄せてパソコンをカタカタといじるお兄ちゃんがそこにいた。
「お、お兄ちゃん……! 何やってるの!」
「んー……意識不明だった数ヶ月、仕事ほっぽり出しちゃったからさ。色々と確認したくて」
「病み上がりなんだから止めなよ! また倒れたらどうするの!」
「大丈夫大丈夫、このメールだけ送ったら終わるから……っと」
たん、とエンターキーを叩いたお兄ちゃんが深く息を吐くと首を回して伸びをした。