目覚めたお兄ちゃんは直ぐに看護師さんに連れられて色んな検査が始まった。

面会時間の終わりごろに戻ってくると、疲れたのか言葉を交わす間もなく直ぐにまた眠ってしまう。

眠る横顔に少し不安になったけれども、その後お医者さんと話してどこにも異常がなかったことが分かりほっとした。


「巫寿、この後どうしたい? 一応まだ学校に戻る車はあるが、薫からは二三日ここに残ってもいいと言われてる」


病院の廊下を歩きながら禄輪さんがそう言った。


「えっと……一旦学校に帰ります。慌てて来たから、何も持ってきてないし。それにお医者さんは安心しても良いって言ってくれたから」

「そうか」

「明日、補習が終わったらまた来ます」

「そうしなさい。明日は私が仕事で来れないんだ。必要なものは玉嘉さまに伝えたから、病院へ来る前に立ち寄りなさい」


はい、とひとつ頷くと大きな手のひらが私の頭を雑に撫でた。

あまりの力強さに顔があげられず、「禄輪さんっ」と悲鳴をあげる。


「良かったよ。本当に」


湿っぽい声が聞こえて目を見開いた。

きゅっと唇をかみ締めて「はい」と頷く。


少しして顔を上げた頃には、禄輪さんの目元が少し赤くなっていた。