看護師さんの「走らないで下さい!」という言葉に心の中で謝りながら必死に廊下を駆け抜けた。
夏休みの間はほぼ毎日訪れていた病室はもうネームプレートを確認しなくても迷わずたどり着ける。
勢いよく病室の扉を開けて転がり込むように中へ入った。
大部屋の窓際、一番奥のベッドは今までは薄緑色のカーテンがずっと閉められていたはずなのに、今日はカーテンが開けられて窓の日差しがよく差し込んでいた。
「巫寿、もう少し静かに開けなさい……。他の患者さんもいるんだぞ」
ベッドサイドに立っていた禄輪さんが振り返って苦笑いでそう言う。
ごめんなさい、と言おうとしたけれど息切れで言葉が途切れた。
肩で息をしながら、一歩一歩とベッドに歩み寄る。バクバクと心臓がうるさかった。
「み、こと……?」
少し掠れた声が私の名前を呼んだ。
耳に馴染んだ大好きな声だ。