学校は楽しいか、とは聞かれたけれどそれ以上深追いしてくることはなく、拍子抜けしたのはつい最近のことだ。
でも玉じいが禄輪さんと知り合いだったなら、その反応も納得だ。
「私も初めてここへ来た時は驚いたんだ、引退されてから十二年間、一切お姿を見せなかった玉嘉さまの気配がしたんでね」
「まあ、隠居してからは誰にも所在を知らせていなかったからな」
しれっとそう言う玉じいに、禄輪さんは小さく笑った。
その様子から、二人が親しい仲なのだと分かる。
「玉嘉さまは私の師匠だったんだ」
「さま、はやめろ。師匠じゃなくて、ただの教師と生徒だろう」
顔を顰めた玉じい。
ええっと目を見開いた。
「禄輪さんの先生だったの……!」
「ああ、稽古はいつも私が泣くまでぼこぼこにされたもんだ」
禄輪さんが泣くまで!?
想像できなくてあんぐりと口を開く。さっきから衝撃事実の連発で開いた目と口が塞がらない。
「あんなもん、まだまだ生ぬるいぞ」
「相変わらずなようで」
「やかましいわ」
ふ、と玉じいが笑みを浮かべる。