「いいねいいね。じゃあ初日はリアル鬼ごっこと洒落こもうか」
懐から出した形代にふっと息を吹きかけると、白い煙がポンと弾けて煙の中から何かが現れる。
憤怒の人相に赤い皮膚、二本のツノにごつごつしたからだ。
思わず止まりそうになった足を必死に言い聞かせて動かした。
「そーれ、全員捕まえろ」
空気が震えるほどの咆哮を響かせた鬼がその巨大な体から想像できないほどの速さで追いかけてくる。
「こらこら、逃げるだけじゃ特訓にならないだろ。祓っても良いし封じても良いし、好きにして良いよ」
「出来るかッ!」
泰紀くんの鋭いツッコミは早速掴まった来光くんの悲鳴で掻き消される。
こうして私たちの長い夏期補習が幕を開けた。