「強烈な拳骨を食らったらしいじゃーん。ちょっと凹んだんじゃない? 見せて見せて」
薫先生が後頭部を触ろうと来光くんに手を伸ばす。
やめてください、と顔を顰めて逃げると薫先生は余計に喜んでお腹を抱えて笑った。
「はーっ可笑し。今回は、それに免じて俺からのお説教は免除してあげるけど、"自分たちの力量を理解させろ"って俺も怒られたんだよねぇ。とばっちりだよ全く」
腰に手を当て息を吐く薫先生に、すみません、と肩を竦めた。
「いい機会だからこの二週間で、きっちり特訓してあげる。この多忙な薫先生がわざわざマンツーマンレッスンの時間を設けて上げたからね、喜びなよ子供たち!」
ぱっと両手を広げて満面の笑みを浮かべた薫先生に、私以外のみんながヒッと息を飲んだ。
なんだか見覚えのある景色に「ん?」の眉根を寄せる。
「とりあえず今から、課外授業だよ。あはは」
「ほ、補習は明日からだろ!?」
「予定は未定、っと」
パン、と手を合わせた薫先生にみんなが「ワアッ」と悲鳴をあげて蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げ出した。
「逃げるよ巫寿!」
嘉正くんにそう声を掛けられて慌てて私も走り出す。