［え、ちょ、ちょっと待って　晒す？］
いきなりの事に動揺が隠しきれなかった。
［うん　だってそんなのひどすぎるもん　全然晒すだけの制裁を受ける価値はあるよ］
そんな私とは反対に破滅ちゃんはつらつらと言葉を並べていく。
［でも、晒すのはちょっとまずくない？］
私しか知らない落ち度がある分晒すことに少し抵抗があった。
そんなこと全く知らない破滅ちゃんはさらに続けた。
［そんなことされて動画まで撮って晒さないなんて天の川ちゃん優しすぎるよ　私なら即晒すそんな奴　話聞いてたら私の方がイライラしてきちゃうもん　なんなのそいつ人の気もしらないで　辛い人の気持ちなんてさ　適当に生きてる人間になんてわかりっこないって］
すごい剣幕でしゃべり倒す破滅ちゃんの言葉を黙って聞く事しかできなかった。
［私は天の川ちゃんの気持ちすごくわかるよ　辛かったでしょ　誰にも理解されないって辛いよね　でも私達みたいに世間から理解されない人間だって少しくらい抵抗したっていいでしょ？私達だって必死に生きてるんだもん］
破滅ちゃんんの声は少し震えていて泣いているようだった。
いや、鼻をすすっているから泣いてるんだと思う。
やっぱり私の居場所はここだ。
同情が気持ちいい。
私の変わりにこんなにも怒ってくれる人がいる。
私の気持ちを代弁してくれる人がいる。
あなたは間違っていないよと、あなたはこうあるべきだよと、背中を押してくれる。
破滅ちゃんの言うとおりだ。
私だって少しくらい抵抗したっていいでしょ？ひどいことを言われたのは事実。
マンツーの勉強で精神的苦痛を受けていたのも事実。
椅子をひっくり返したのだって私の我慢の限界だったんだ。
あれは本当の私じゃない。
林のせいで溜めに溜められていたストレスが爆発した瞬間だったんだ。
それをこの子が気づかせてくれた。

［そうだよね　晒すしかないよね］

私の結論はこれだった。
私を見下した罰。
私に与えたストレスに比べたらこんなの可愛いもんでしょ。
ゆうてまあ私のフォロワーなんて晒したところでそんなに広まらないし大ごとにならないことくらい容易に想像がつく。
破滅ちゃんに教えてもらいながら動画を編集した。
隠し撮りだった為顔とかを隠す必要はなかったが名前を言っているところを無音にしたり、私が悪いように誤解を与えてしまいそうなところは全て切った。
そしていつも文字を打つところに動画のURLをはっつけ、
≪こんなのひどすぎる≫
とだけ打って
破滅ちゃんの「頑張れ、大丈夫大丈夫」という声に励まされ
少し震える手で投稿ボタンをポチっと押した。

すぐに画面を閉じ、早まる心拍数を感じながら「やってやった」という気持ちと
「大ごとになったらどうしよう」という気持ちでいっぱいいっぱいだった。

そしてスマホが震え
＞３件の通知
＞５件の通知
＞10件の通知
＞19件の通知

どんどん増えていく通知の数を見て頭がぎゅっとするのを感じた。
心拍数はより早くなる。
破滅ちゃんは電話越しで
［私もコピペして拡散しといたよ］
とのんきな感じでしゃべっていた。
［わ、天の川ちゃんよかったね　バズってるよ投稿］

その声で私の心拍数は限界を迎えた。
［ば、ばずってる？なんで？］
［わかんないけどすごい速さで拡散されてる　ネットの人たちってこういうネタ大好きなんだよね］
慌ててスマホを開くと

＞1037回再生
＞897いいね
＞569回拡散
＞コメント326

私の動画に信じられないほど大きな数字が表示されていた。
この動画を投稿してまだ５分もたってないのに。
なんで？これ、え、どうなっちゃうの？
こうしている今も数字はどんどんどんどん増えていく。

［天の川ちゃん、コメント欄見てみな］

少しわくわくしたような声で破滅ちゃんが言った。

≪何こいつ≫
≪うわー　勝ち組の戯言≫
≪きんもww≫
≪こういうやつはいなくなればいいと思いまーす≫
≪こういう考えの人うわーって思っちゃうby３軍女子≫
≪こいつがかわいいなら許す≫
≪え、私こんなん言われたら泣くんだけど≫
≪この子はきっと悩みとかなんだろうな～≫

さっきまでの動悸がうそみたいだ。
スマホ画面に映る私の頬は緩んでいた。
もちろん
≪え、こんなに言われること？≫
≪晒すってやばくない,,,？≫
≪それくらいの気持ちで生きてる人の方が俺は好き≫
っていうコメントもちらほらある。
あるけどそんなのどうでもいいくらい私を擁護してくれる人であふれかえっていた。
凄い。
私には何千人単位の味方がいる。

［天の川ちゃんよかったね］
［うん、ありがと］

溢れだしそうな興奮を何とか抑えて冷静を装って返事をする。
ああ、最高だ。