「おい人殺し、お前ちゃんと林の家族に謝ったんか?」
「謝罪しろ謝罪~」

教室に入った途端、今日は謝罪コールが巻き起こった。

「撮ってやるよ、ほら謝罪~」
「私も撮ってあげる~はいどうぞ?」

クラスの皆がスマホを構えて私を見ていた。
わー私すごく注目をあびているわ。
こないだまで私が欲していたものでしょ。
注目。
今や私は有名人。
こんなにも私は注目されている。
 
でも、こんなのおかしいでしょ。
私だけがこんなに責められるの、おかしい。
少しくらい抵抗したっていいでしょ。

息を大きく吸って皆の方を睨んだ。
「なに?文句?」
「この期に及んで?文句言う筋合いあんの?」

「,,,んで、」

「きこえな~い」

くそ。声がでない。腹立つくそくそ。ああもう。

「なんでそこまで言われないといけない。あんたたちに関係ないじゃん」

やっと出た。

「え?クラスメイト死んでて関係ないはひどくね?」
「てゆうかお前ももともと関係ないじゃん」

「私は林にストレスが溜まってたから、それに皆だって林の悪口言ってたじゃん」

「ストレスたまってたから晒しましたってやばすぎ。悪口言っても晒すのがだめってことくらい誰にだってわかります~」

「じゃあなんで今スマホ構えてんのよ」

「おもろいから」
「それ以外に理由なくね」
「それな」
「ちょっと注目されたからって有名人気取っちゃったよね~痛すぎ」

何も言葉が出てこない。
口が強くつむがれる。

「しかとですか~ウザ~」
「なんか言えよ、有名人気取り~」
「有名人気取りしんど」
「しかとはないわ~」
「お前のせいで人死んでんだよ」
「そうだそうだ」
「責任取れんのか~」
「まじで林さんかわいそう,,,」
「人殺してから食べる飯はうまい?」

「ちょっと待ってよ、見てたわけでもないのにネットの情報鵜呑みにしすぎでしょ」

「いまさら嘘とか言い出すの?」
「真実とか嘘とか、人死んでんだよ?」

「私のせいで林が死んだのは申し訳なと思ってるよ。でも私だけのせいじゃないじゃん」

「謝って済む問題なの?」
「林さんは生き返らないよ」
「私だけのせいじゃないとか、小学生の言い訳じゃん」

「いや、ほんとだって。ほんとに申し訳ないって思ってる」

「反省してる感な~い」
「それな。言わされてる感」
「林のことなんてしったこっちゃないって感じ~?」
「ご遺族かわいそ」

「そんなことないってちゃんと反省してるって」

「くねくねしてんじゃねえよ。人死んでんだよ、まじめにやれよ」
「やっぱ謝罪しないと」
「てゆうか勉強教えてもらってたのにひどすぎる」
「仲直りまでしようとしてくれたのにね」

もう汗が止まらなかった。
声が、指先が、体が、震えてともらない。
何を言っても何も届かない。
いったいどうしたらいいの?
私は惨めにも「ごめんなさい」と繰り返すしかなかった。

「だから伝わんないって~」
「本当に思ってるなら普通土下座するよな」
「それな土下座だろ」

土下座をすればこれが終わるんだろうか。
外をちらっと見る。
先生が素通りしていった。
「なによそ見してんの」
という声を聞き逃して、地面に膝をつき、
震える手をついて
頭を下げた。
おでこが地面にこつんという音を立ててぶつかった。
「申し訳ございませんでした」

それと同時に巻き起こる爆笑。
シャッター音。
耐えられなかった。
そして絶望の淵でおぼれかけていた私にとどめを刺した言葉は

「まあ、人を殺すんならこれくらいの覚悟あって当然だよね」

という言葉だった。