頭ではわかっていた。
そんなわけない。
声なんて似ている人はごまんといる。
冷静に考えれば林ときらりが同一人物何てことあり得るわけないとわかっていた。
それでも、そんな情報にも飛びつくのがネットだ。
案の定皆はそのコメントに飛びついた。

≪まって、たしかにすぎるww≫
≪特定班よろ≫
≪言われてみれば一緒(笑)≫
≪とくていはーん≫
≪ちょ、おもろすぎwww≫

なんでこんだけの人が飛びつくのかというと
まずきらりは元々敵が多いインフルエンサーであったこと
次にアンチを実力でねじ伏せたみたいな風潮が流れていた
そしていま、人気の女優として名を挙げたことを良く思ってないやつが私を含め多くいるということ
今まできらりの活躍を良く思っていなかった元アンチ勢が「しめた」と言わんばかりにきらりを袋叩きにするのだ。
その中に「冷静に考えたら」なんて言葉は1つもない。
事実なんてどうでもいい。
自分が嫌いな奴の事を叩けるのなら、きっかけは何でもよかった。

≪今度きらり配信するって言ってた≫
≪そこできいてやろうぜww≫
≪せっかくドラマ始まった所なのにかわいそーw≫
≪さんせーい みんなでつめてやろ≫
≪これでマジ本人だったら笑う≫

コメント欄は明後日のきらりの生配信で事実確認をするということで一致団結していた。
私もその配信に顔を出そう。
わくわくする。

もはや私にとってネットの世界は依存物となっていた。
ネットによる気分の起伏の変動が病的だった。
急に空っぽになったり急に満たされたり、急にどうでもよくなったり急にわくわくしたり。
摂取すればするほどおぼれていく。
退屈な日々を紛らわすために足を踏み入れてしまった世界。
私はその強すぎる刺激に依存しきっていた。
そのことに気が付いている私がいた。
多分防衛本能。
危ないよ。これ以上はダメだよと私に訴えかけてくる私の本能を、私は今殺した。
うるさい、だまれ、ここが私の居場所なんだ
と、私は自ら依存の道を選んだ。
それが破滅の道だったとしても私には関係ない。
その時はその時だ。
ネットに依存した私はもうここまで腐っていた。