つまらない。
つまらないつまらないつまらないつまらないつまらない。
毎日が最悪。
朝起きて、ご飯てきとうに食べて？
着替えて、歩いて学校行って、授業聞き流しててきとうにほっつき歩いて家に帰る。
母親の「お風呂入りなさい」に腹立てながら渋々お風呂入ってテーブルの上に置いてあるごはんてきとうにつっついて、
そんで部屋に引きこもる。
なんて退屈で、最悪で、味気のない毎日。
今日、学校でボケーっとしてたら私の前の席で群がってた女の中の女１が
「ねーきいてー。今日バイト休みだったのにさー。急に店長に入ってほしいって言われて～。まじ最悪じゃない？」
って足組みながらキレていた。
そしたら女２が
「私もさー。昨日電車乗ってたら隣になんかきもいおじさんのってきてほんと最悪だったー」
ってスマホ触りながらキレてた。
周りにいたまた別の女たちは「まじー？最悪じゃん」と爪いじくりながら返事してて、こいつら何のために集まって、なんでこんな意味のない話してんだろと疑問に思った。
女１は多分「まじで？めっちゃ大変じゃん」待ちだっただろうに女２に話題を取られ、女２は「えっ大丈夫だったの？」とか「可愛いからねらわれちゃったんじゃない？」待ちだったんだろうけどそんな返事は返ってこなかった。
そして今、話す話題もなくなった女たちはお互い黙ってスマホをいじりだし、時折「はーねむー」とか「お腹空いたー」とかぽつぽつ独り言を落とすだけだった。
この気まずすぎる空気に１番に耐えられなくなったのは私で、スマホだけ持ってトイレに行った。
私がどうしてこんな気まずい思いをしてまで人間観察にふけっているかというと
学校に友達がいないからだ。
１人も。
ぼーっと過ごしていても時間は永遠にかんじるだけ。だから始めたのが人間観察。
高校性になってからか、中学生のときもか、誰かと一緒に遊びに行ったことはおろか、お昼の時間を誰かと一緒したこともないし、グループワークをしたことすらなかった。そういう時は必殺寝たふりでその場をしのぎ、遠足やら校外学習やら学園祭やら体育大会等の学校行事は全部欠席した。
なんでこんな私が高校受験をパスできたのかというと
記憶もないくらい昔に受けさせられたお受験のおかげで幼稚園からエスカレーター式でここまで来てしまったから。
高校からは一般受験生も入ってくるからもはやだれが幼稚園からで誰が高校からなんて分からなかった。
そんなことに興味なかった。
現実の人間はつまらない。
トイレにこもってスマホの電源を入れ、SNSアプリを開いた。
こんな私の唯一の人生の生きがい、
それは
≪いや、顔面やばすぎw鏡見ろよww≫
コスプレをして加工バッチバチで決め顔を投稿しているインフルエンサーにそうコメントを送信した。
反応はいつもすぐ来る
≪それなすぎて草≫
≪同じこと思ってる人いたー≫
≪めっちゃわかります。私このキャラ推しだったから辛すぎ≫
≪推しけがされた気分≫
私が言ったことに皆が同意してくれる。
コメントへのハートの数も10、15、36、50、とどんどん増えていく。
楽しい。満たされる。
こんだけの人が同意してるんだから私が間違ったことをしていないことくらい誰にだってわかる。
言われるべきの人が言われてるだけ。
指を触れなくても勝手にどんどんスクロールされていくコメント欄を見て笑みが零れた。
それなのにちょうどチャイムが鳴ってしまって、舌打ちを１つしてスマホを閉じた。
私がなんでこうやってわざわざ勘違いしているインフルエンサーたちにそれを教えてあげるようになったかというと
暇だったから。
色んなゲームをインストールしては飽きて消し、いろんな漫画を買いあさっては飽きて売り、何も続かなくてずっと暇をしていた。することと言えばSNSを見あさるくらいだった。
でもそのSNSも寒気がする投稿ばかりで見てられなかった。
承認欲求の塊。
どいつもこいつも加工に加工を重ねた顔で歌に合わせて口をパクパクさせているだけの動画に何百、何千の人たちが群がっていいねをしたり
≪今日もかわいい！≫
≪一コメ！≫
≪仕事辛すぎて死のうかと思ったけど○○ちゃんの投稿のおかげで生きようと思えた≫
とかなんとか。虫がたかってるみたいで気持ちが悪かった。
寒気がして鳥肌が立った。
でも私はその時思った。
「こいつそんなにかわいいか？」
純粋な疑問だった。嫌味とかではなく。本当に純粋な疑問。
だって明らかに顔の前を手が通ると加工がぴくぴくしているし、照明の当たり具合もえぐそうだった。
この鼻もどっからどう見ても整形でしょ？
だから教えてほしかった。
この人の良さを私にプレゼンしてほしかった。
死のうと思った人が音楽に合わせて口をパクパクさせてるだけの動画を観てなんで生きようと思えるのか。
気になって仕方がなかった。
だから聞いた。
≪この人の良さって何ですか≫
返信を待った。
いったいどんな理由があるんだろ。
私もこの人の良さが分かればこの人を推して、このつまらなすぎる人生が少しばかり変わるかもしれない。
スマホが震える。
ブー
スマホを開こうと手を伸ばしているその一瞬の時間で
ブー、ブーブー、ブー、ブー、ブーブーブー
凄い量の通知が来た。
今までこんなにスマホがふるえたことない。
アプリには「34件の通知」と書いてあった。
ちょっと怖い。なんで？ちょっと気になったから聞いてみただけなのに。
大げさかもしれないけどちょっと指が震えた。
≪え、同じこと思ってる人いた≫
≪それなです。私もこの人の良さ分からない≫
≪加工しまくってるしねー≫
返信は予想外のもので一瞬思考が追いつかなかった。
え？違う違う。私はただ疑問に思っただけだよ。やめてよ。私が悪者になるじゃん。
≪強気で草≫
≪なんでそんなこと言うんですか？≫
≪このコメみて本人が悲しむって思わないんですか？≫
≪ひどすぎる≫
ほらー怒らしちゃったじゃん。やっぱりなれないことなんてするもんじゃないわ。
どうしよ。これ、住所特定とかされるのかな,,,。
今まで学校でボケっと聞いていた、架空請求に気を付けましょうとか、SNSの使い方についてとかの授業が頭をよぎる。
≪いや、よく見てみろよwどうみても良さ分からんだろ≫
≪私は主の言ってることにさんせーい≫
≪人の感じ方はそれぞれだからね。良さが分からない人を責めるのは違うでしょ≫
あれ？守ってくれた？この人たち私の事守ってくれてるのかな。優しい。嬉しい。
そうだよ。人の感性なんて人それぞれでしょ？別にいいじゃん。
それなのに寄ってたかってバカみたい。いい顔して自分の推しに認知されたいだけでしょ。
こんなんにムキになっちゃって子供じゃあるまいし。
流れるコメント欄を眺めて、私は満たされていた。
この時はまだ何に満たされてるのか分からなかった。
それでも私の暇すぎる毎日には刺激が強かった。
自分が放った一言でこんなにも沢山の人が振り回されている。
私の放った一言で喧嘩して、言い合って。このインフルエンサーのコメント欄で一番反応のあるコメントとして私のコメントは1番上まで上げられた。
学校や家では満たされることのなかった私の中の何かの欲がどんどん満たされてあふれるのを感じた。
ほとんどの人が賛成してくれる。認めてくれる。賞賛して、私を非難する敵から守ってくれる。
このファンたちもきっと盲目になってるだけなんだ。
じゃあ、それも教えてあげなきゃ。
だって推し活ってお金かかるんでしょ？もったいないよ。早く目を覚まさしてあげないと。
私の中で生まれて初めて芽生えた「正義感」だった。
それからは暇さえあればSNSをみあさってコメントをした。
家に帰って部屋にこもっているとき、学校の休憩時間、たまに信号待ちでもスマホとにらめっこをしていた。
ネットの世界が楽しいから、より一層現実世界に嫌気がさしてきた。
人間観察をするか、コメントをするか。私の人生はその2択だった。
今日も指をせわしなく動かし、”患者”を探し出す。こないだまでの人はようや自分の身の丈に気づけたらしく、活動休止の動画をアップしていた。
ファンの中には嘆き、悲しむ人もいたが基本的には
≪乙ww≫
≪効いてて笑うwww≫
≪じゃあね～～～(笑)≫
こんなコメントばかりだった。
私も
≪今までお疲れさまでした～w≫
とだけコメントを残し、その人の事は忘れることにした。
もういいからこの人は。
次の人を探すべくスクロールする。
ちょうどいいやつを見つけた。
どっかで見たことがあるような凡人じみた顔立ちの癖に、「女優志望です！古参になってください!!」とかうたっている。
そいつの名前は＠kirari-000と言った。
つまらないつまらないつまらないつまらないつまらない。
毎日が最悪。
朝起きて、ご飯てきとうに食べて？
着替えて、歩いて学校行って、授業聞き流しててきとうにほっつき歩いて家に帰る。
母親の「お風呂入りなさい」に腹立てながら渋々お風呂入ってテーブルの上に置いてあるごはんてきとうにつっついて、
そんで部屋に引きこもる。
なんて退屈で、最悪で、味気のない毎日。
今日、学校でボケーっとしてたら私の前の席で群がってた女の中の女１が
「ねーきいてー。今日バイト休みだったのにさー。急に店長に入ってほしいって言われて～。まじ最悪じゃない？」
って足組みながらキレていた。
そしたら女２が
「私もさー。昨日電車乗ってたら隣になんかきもいおじさんのってきてほんと最悪だったー」
ってスマホ触りながらキレてた。
周りにいたまた別の女たちは「まじー？最悪じゃん」と爪いじくりながら返事してて、こいつら何のために集まって、なんでこんな意味のない話してんだろと疑問に思った。
女１は多分「まじで？めっちゃ大変じゃん」待ちだっただろうに女２に話題を取られ、女２は「えっ大丈夫だったの？」とか「可愛いからねらわれちゃったんじゃない？」待ちだったんだろうけどそんな返事は返ってこなかった。
そして今、話す話題もなくなった女たちはお互い黙ってスマホをいじりだし、時折「はーねむー」とか「お腹空いたー」とかぽつぽつ独り言を落とすだけだった。
この気まずすぎる空気に１番に耐えられなくなったのは私で、スマホだけ持ってトイレに行った。
私がどうしてこんな気まずい思いをしてまで人間観察にふけっているかというと
学校に友達がいないからだ。
１人も。
ぼーっと過ごしていても時間は永遠にかんじるだけ。だから始めたのが人間観察。
高校性になってからか、中学生のときもか、誰かと一緒に遊びに行ったことはおろか、お昼の時間を誰かと一緒したこともないし、グループワークをしたことすらなかった。そういう時は必殺寝たふりでその場をしのぎ、遠足やら校外学習やら学園祭やら体育大会等の学校行事は全部欠席した。
なんでこんな私が高校受験をパスできたのかというと
記憶もないくらい昔に受けさせられたお受験のおかげで幼稚園からエスカレーター式でここまで来てしまったから。
高校からは一般受験生も入ってくるからもはやだれが幼稚園からで誰が高校からなんて分からなかった。
そんなことに興味なかった。
現実の人間はつまらない。
トイレにこもってスマホの電源を入れ、SNSアプリを開いた。
こんな私の唯一の人生の生きがい、
それは
≪いや、顔面やばすぎw鏡見ろよww≫
コスプレをして加工バッチバチで決め顔を投稿しているインフルエンサーにそうコメントを送信した。
反応はいつもすぐ来る
≪それなすぎて草≫
≪同じこと思ってる人いたー≫
≪めっちゃわかります。私このキャラ推しだったから辛すぎ≫
≪推しけがされた気分≫
私が言ったことに皆が同意してくれる。
コメントへのハートの数も10、15、36、50、とどんどん増えていく。
楽しい。満たされる。
こんだけの人が同意してるんだから私が間違ったことをしていないことくらい誰にだってわかる。
言われるべきの人が言われてるだけ。
指を触れなくても勝手にどんどんスクロールされていくコメント欄を見て笑みが零れた。
それなのにちょうどチャイムが鳴ってしまって、舌打ちを１つしてスマホを閉じた。
私がなんでこうやってわざわざ勘違いしているインフルエンサーたちにそれを教えてあげるようになったかというと
暇だったから。
色んなゲームをインストールしては飽きて消し、いろんな漫画を買いあさっては飽きて売り、何も続かなくてずっと暇をしていた。することと言えばSNSを見あさるくらいだった。
でもそのSNSも寒気がする投稿ばかりで見てられなかった。
承認欲求の塊。
どいつもこいつも加工に加工を重ねた顔で歌に合わせて口をパクパクさせているだけの動画に何百、何千の人たちが群がっていいねをしたり
≪今日もかわいい！≫
≪一コメ！≫
≪仕事辛すぎて死のうかと思ったけど○○ちゃんの投稿のおかげで生きようと思えた≫
とかなんとか。虫がたかってるみたいで気持ちが悪かった。
寒気がして鳥肌が立った。
でも私はその時思った。
「こいつそんなにかわいいか？」
純粋な疑問だった。嫌味とかではなく。本当に純粋な疑問。
だって明らかに顔の前を手が通ると加工がぴくぴくしているし、照明の当たり具合もえぐそうだった。
この鼻もどっからどう見ても整形でしょ？
だから教えてほしかった。
この人の良さを私にプレゼンしてほしかった。
死のうと思った人が音楽に合わせて口をパクパクさせてるだけの動画を観てなんで生きようと思えるのか。
気になって仕方がなかった。
だから聞いた。
≪この人の良さって何ですか≫
返信を待った。
いったいどんな理由があるんだろ。
私もこの人の良さが分かればこの人を推して、このつまらなすぎる人生が少しばかり変わるかもしれない。
スマホが震える。
ブー
スマホを開こうと手を伸ばしているその一瞬の時間で
ブー、ブーブー、ブー、ブー、ブーブーブー
凄い量の通知が来た。
今までこんなにスマホがふるえたことない。
アプリには「34件の通知」と書いてあった。
ちょっと怖い。なんで？ちょっと気になったから聞いてみただけなのに。
大げさかもしれないけどちょっと指が震えた。
≪え、同じこと思ってる人いた≫
≪それなです。私もこの人の良さ分からない≫
≪加工しまくってるしねー≫
返信は予想外のもので一瞬思考が追いつかなかった。
え？違う違う。私はただ疑問に思っただけだよ。やめてよ。私が悪者になるじゃん。
≪強気で草≫
≪なんでそんなこと言うんですか？≫
≪このコメみて本人が悲しむって思わないんですか？≫
≪ひどすぎる≫
ほらー怒らしちゃったじゃん。やっぱりなれないことなんてするもんじゃないわ。
どうしよ。これ、住所特定とかされるのかな,,,。
今まで学校でボケっと聞いていた、架空請求に気を付けましょうとか、SNSの使い方についてとかの授業が頭をよぎる。
≪いや、よく見てみろよwどうみても良さ分からんだろ≫
≪私は主の言ってることにさんせーい≫
≪人の感じ方はそれぞれだからね。良さが分からない人を責めるのは違うでしょ≫
あれ？守ってくれた？この人たち私の事守ってくれてるのかな。優しい。嬉しい。
そうだよ。人の感性なんて人それぞれでしょ？別にいいじゃん。
それなのに寄ってたかってバカみたい。いい顔して自分の推しに認知されたいだけでしょ。
こんなんにムキになっちゃって子供じゃあるまいし。
流れるコメント欄を眺めて、私は満たされていた。
この時はまだ何に満たされてるのか分からなかった。
それでも私の暇すぎる毎日には刺激が強かった。
自分が放った一言でこんなにも沢山の人が振り回されている。
私の放った一言で喧嘩して、言い合って。このインフルエンサーのコメント欄で一番反応のあるコメントとして私のコメントは1番上まで上げられた。
学校や家では満たされることのなかった私の中の何かの欲がどんどん満たされてあふれるのを感じた。
ほとんどの人が賛成してくれる。認めてくれる。賞賛して、私を非難する敵から守ってくれる。
このファンたちもきっと盲目になってるだけなんだ。
じゃあ、それも教えてあげなきゃ。
だって推し活ってお金かかるんでしょ？もったいないよ。早く目を覚まさしてあげないと。
私の中で生まれて初めて芽生えた「正義感」だった。
それからは暇さえあればSNSをみあさってコメントをした。
家に帰って部屋にこもっているとき、学校の休憩時間、たまに信号待ちでもスマホとにらめっこをしていた。
ネットの世界が楽しいから、より一層現実世界に嫌気がさしてきた。
人間観察をするか、コメントをするか。私の人生はその2択だった。
今日も指をせわしなく動かし、”患者”を探し出す。こないだまでの人はようや自分の身の丈に気づけたらしく、活動休止の動画をアップしていた。
ファンの中には嘆き、悲しむ人もいたが基本的には
≪乙ww≫
≪効いてて笑うwww≫
≪じゃあね～～～(笑)≫
こんなコメントばかりだった。
私も
≪今までお疲れさまでした～w≫
とだけコメントを残し、その人の事は忘れることにした。
もういいからこの人は。
次の人を探すべくスクロールする。
ちょうどいいやつを見つけた。
どっかで見たことがあるような凡人じみた顔立ちの癖に、「女優志望です！古参になってください!!」とかうたっている。
そいつの名前は＠kirari-000と言った。
