「……よく分かりましたね」

 お店に足を踏み入れてすぐ、なんならドアを開ける前から、私はもう微笑んでいたのに。
 愛想笑いなら、たぶん私は同じクラスの、というか同じ学校の誰よりも上手い。小さい頃からずっとやってきたし、誰からもほんとの笑いだって思われてるはずだ。

「私も同じですから……同じでしたから」

 最後に少しだけ言い換えて、新月さんはふわっと微笑む。その瞬間に間違いだって気づいた。
 本物の笑いと全く同じ愛想笑いなんて間違いだったって。そんなものできないんだって。
 だって愛想で、こんなにも眩しい笑顔を、私は絶対作れない。作れるわけがない。
 こんなにも強くて優しくて温かくて満ち足りた、こんなにも幸せそうな笑顔を。