「……いえ、全然言いにくい事じゃないです」

 ふいに、喉のつかえがとれて、声がスムーズに出た。

「私、両親とも家にいないことが多くて、だから外で食事したり、軽くお菓子を食べたりするのが日課というか。それでこのあたりまで来た時に、なんかすごくいい匂いがしたので」

 新月さんは、安心したような目で私を見ていた。
 私が愛想笑いをやめたことに気づいたんだと思った。

「それでなんですね」

 新月さんは小さく呟き、続いて私を見た。真っすぐに、真っすぐに。

「ご来店してくださったお客様を見た時、ああ、この人は辛いんだなって思いました」

 はたから見たらすごく失礼なことを言われているような感じはする。でも、全然悪い気持ちはしなかった。むしろ嬉しかった。
 だって、


____やっと、分かってくれる人に会えた。
    気づいてくれる人がいた……。