「……あ、お客様? ごめんなさい、言いにくいことでしたか?」

 そこで初めて、新月さんの目を真っすぐに見て、
 気づいた。

 この人だ、きっと。

 何もかも奥の奥まで見透してしまうような、誤魔化してもすぐにばれてしまうような。
 でも、誤魔化しだって分かっても、咎めたり真相を聞き出すんじゃなくて、言いたくないことを聞いちゃったのかなって、自分を責めてしまうような。
 悪いことなんて何一つ見ていないのかと思うほどに澄んでいて、純真で、真っすぐに見つめたら、聴いたら、とても嘘なんてつけなくなりそうな、

 新月さんのこの目。この声。

 この目の前で誤魔化しなんてきっと無駄だし、こんなにも綺麗で優しい声の人にきっと嘘なんてつけないし、

 そしてこんなにも穏やかで、全部受け容れてくれるような新月さんの前で、

 私の心はきっと思ったんだ。
 ほんとのことを話してしまいたいって。