「……はあ」

 新月さんは恨めしげにドアを見つめてため息をつき……でもその顔は、どこかホッとしている。
 話しかけたくても話しかけにくかったんだろう。整った横顔は、女の子が作ってくれたきっかけに安心しているように見えた。
 それから新月さんは申し訳なさそうにしつつこちらを見る。

「えっと……じゃあ、その、申し訳ないんですけど、今大丈夫ですか?」
「はい、全然大丈夫です」

 すぐさま目尻を緩めた優しめの愛想笑いで微笑んで見せると、新月さんは何とも言えない悲しそうな顔をした。
 あれ、どうしたんだろう……。
 不思議に思っていると、新月さんは小さく息を吸って、

「では」

 と口を開いた。