「ごめんなさい! なんかこの子が勝手なこと言っちゃったみたいで! 別にその、そこまでして話すことでもないというか、わざわざ閉店後も残っていただくほどのことではなくてっ」
「え、でも新月さんもの言いたげにずっとお姉さんのこと見てたじゃん」
「あのね、その、それはだから……」

 新月さんが言い淀んだ隙をついて、女の子はくるりと踵を返すと、

「じゃー頑張ってね、新月さーん! 私今日はもうあがりまーす!」
「あっ、こら! 何を頑張るの!? ああああ待って、せめて食器洗い……を……」

 新月さんが言い終わる前に、厨房へ続くドアはバタンと音を立てて容赦なく閉められていた。