「……! !?」

 あまりの驚きでティーカップを放り出しそうになった。
 なにこれ、美味しい! なにこれ! なんかの魔法!?
 たぶん紅茶だと思うけど、紅茶ってこんなに美味しかったっけ……どうしよう、これは他の喫茶店に行けなくなってしまうぞ……。

「すっ、すごい美味しいです!」

 身を乗り出して言うと、新月さんは「よかった」と笑う。新月さん、最近まで愛想笑いばっかりって言ってたけど、今はほんとによく笑うんだ。

「……実は私、紅茶が怖かったんです」

 私が一気飲みして(マナーとかどうでもよくなるくらい美味しかったって事にしてください)テーブルに置いたティーカップを見つめながら、新月さんは小声で言った。
 え、と聞き返すと、お盆の上に飲み終わったカップを乗せて、新月さんは困ったような笑い方をする。