「私は小さい頃ずっと辛い思いをしていて。というより、つい最近までずっと、素直に笑うことができなくて、ひたすら無表情と愛想笑いを貫いていて。だから、なんとなくですけど、自分と同じ人は、見たら分かるんです」

 辛いのを我慢している人とか、愛想笑いばかりの人とか、強いふりをしている人とか、必死に自分の傷を隠し続けている人とか、誰にも認められずにいる人とか、この世に自分を受け入れてくれる場所がないんだって思っている人とかは。
 見たら、分かるんです。

 少しだけ悲しそうな顔で、新月さんは言う。

「あの子……さっきのバイトの子にはバレちゃってましたけど、だからどうにかしてお客様に話しかけて、気持ちを和らげてあげたいなって思いました」
「和らぐんですか……?」

 私は顔を上げた新月さんと視線を合わせる。
 和らぐわけがない、調子に乗らないで、そんな怒りと。
 信じられない、でも本当に和らぐかもしれない、そんな期待を。
 合わせた声で、新月さんにきく。

「和らぐんですか? 私は」