不思議な喫茶店だった。
 閉店時間を過ぎて誰もいなくなった店内で、私は思う。
 そして、自分で思ったくせに、どうして自分がそんなことを考えたのか不思議になった。

 だってこの喫茶店は、どこも不思議じゃないからだ。

 内装が特殊なわけでも、一風変わったインテリアがあるわけでも、外見が特別しゃれているわけでもない。
 流れてくる紅茶の香りは今までのどの喫茶店とも比べ物にならないくらいいい匂いだし、まるで自分の家にいるみたいにすんなり落ち着ける雰囲気はお店にしては珍しいけど、だからといってそこまで奇妙でもない。

 なのにどうしてか頭にふっと、「不思議な喫茶店だな」という言葉が浮かんできた。だから、正確には「思った」わけじゃなくて、「感じた」っていうのが正しいのかもしれない。

 でも、本当になんで?
 窓際からもカウンターからも離れた隅の席から店内を見渡していると、

「お待たせしましたー」