「あと、パスタのように長いものは端と端を結ぶとまあるく円になることから、円と縁をかけて良縁に効果があるとされていて、さらにここに白いホワイトソースを入れることによってその効果を強めます。白い食べ物を体に入れると出会った相手の印象をまろやかに清潔感と安心感を与えてくれるんですよ。長年の仕事の成果が報われたり、新規の仕事が決まったり、これを食べたら……仕事において何かしら飛躍する縁を結んでくれるかもしれませんね」

紺は微笑みを浮かべながら、真っ白な木の葉型のプレートに鍋の中のものを注ぎ入れると私の前にコトンとおいた。

「お待たせいたしました。春キャベツと朝どれトマトのクリームパスタです」

目の前のプレートからは湯気が立ち込めて、クリームのやさしい香りと野菜たちの香ばしい香りに心が躍る。

「さぁ、琴さん。温かいうちにどうぞ召し上がれ」

紺の笑顔に頷きながら私はすぐにナイフとフォークを持ち上げると直ぐにクリームパスタを頬張る。私はゆっくり味わうように咀嚼してから飲み込んだ。その瞬間、自然と笑顔がこぼれる。

「わぁ……初めての味……甘いクリームソースにトマトの酸味がちょうどよくて、とってもまろやかで、春キャベツの触感が楽しくて……不思議と笑顔になっちゃいます」

「ふふ……そういってもらえると僕もとても嬉しいです。明日から琴さんに素敵なご縁があるといいですね」

紺の笑顔をみながら私は自然と頷いていた。そして綺麗に食べ終わる頃には、お腹も心も満たされていることに気づく。紺が空になったプレートを引き上げるとカラシ色の湯のみに緑茶を入れた。

「どうぞ」

「……あったかい。落ち着く……」

紺もカウンター越しに自分の分の緑茶を注ぐと一口飲んだ。


「琴さん、お仕事は大変ですか?」

「え?」

湯飲みから視線を移せばすぐに紺と目が合う。

「いえ……先ほど琴さんにお声がけする前の後ろ姿が……そのなんとなくお疲れのように見えたので……」