「たんぽぽコーヒーでも飲む?」

 まひるがコーヒーを注ぐ。たんぽぽコーヒーとはたんぽぽの根を使ったハーブティーの一種だ。コーヒーと言ってもお茶の一種でノンカフェインなので、妊婦さんやカフェインが苦手な人におすすめだ。湯気が体を温めてくれる。少しずつゆっくり熱いたんぽぽコーヒーを飲む。

「まひるが入れてくれるものは何でもおいしいな」
「褒めても何も出ないわよ」 

 夢香が帰ったあと、店を閉め、たんぽぽコーヒーを飲みながらアサトとまひるが相談していた。

「こんな調子で候補者見つかるの? 複数候補は必要だと思うけれど、日本からよりも時の国で探したほうがいいんじゃない?」
 まひるは冷静な目で意見する。見た目は10歳なのに。

「時の国の住人ならば王になるリスクが少ないからな」
「だって今時、家族を捨ててまで異世界に行きたい人なんていないでしょ」
 急に元の18歳の姿になって意見するまひる。

「なんで18歳の姿になってるんだよ?」
 アサトがつっこむ。

「だってこっちが本来の姿よ、結構子供の姿って疲れるんだから」
 髪の毛をかき上げながら足を組んで立つまひるは一般的な18歳よりも色気がある。

「国王にはずっと秘密にするのか?」
「いずれちゃんと話すわ」
「ったく、小さいからかわいがっていたのに、まさかの生意気な同じ歳とはな」
 アサトが柔らかなくせのある髪をかき上げながらうんざりした顔をする。

「アサトってあたしには丁寧語を使わないし優しくないのね」

「同じ歳の、生意気な妹に優しくする必要ないだろ」
 アサトが唯一、丁寧語を使わない相手がまひるというのは確かだ。アサトは誰にでも常に丁寧語を使うし優しい。

「10歳の時のほうが丁寧語だったじゃない」

「生意気な奴には丁寧語は使わねえ」
 まるでヨルトみたいな口調だった。

「夢香がいないとずいぶん素がでるのね、彼女に見せてあげたいわ。夢香のこと本気なの? デートも1回くらいでしょ? 捨てられるわよ」

「僕は本気だよ」
 アサトは店内の時計を見つめながら言う。

「アサトの素の口調で話したら、口の悪さが災いして嫌われるかもよ。結婚前に素は見せないと詐欺っていわれるんじゃないの?」
「夢香はどちらの僕も愛してくれているはずだ」
「やだやだ、そういう思い込み気持ち悪いわよ」

「まひるは18歳らしい生活しなくていいのか?」
「別に。私は人と関わることもめんどくさいほうだから」
「男に困っているならば、僕の知り合いを紹介するからな」
「結構。男は面倒よ。それよりヨルトって、夢香のこと好きなのかもね」
「夢香はかわいいからな。好きになるのはわかるが、夢香は僕のものだし」

「キモイ、キャラ崩壊してる、絶対あんたキモイわ」
 時折コントのようなやり取りを見せる義理の兄妹は以前より距離が縮まったようにも思える。
「明日は大事な面接日だ」