時の国の宮殿にはあっという間に着く。アサトと18歳の姿のまひるが対話する。
「どういうつもりだ?」
珍しくアサトがきつい口調で問いただす。
「いつもの丁寧語じゃないのね、怖いよアサト」
まひるはいつもとは違う兄の表情に気づきながらもさらっと会話をする。
「怖いのはお前のほうだ。平気な顔をして銃を使って怪我をさせるし、人を騙すし、とんでもない妹だ。丁寧語を使う義理はない」
壁ドンといわれる体勢になっているが、ここは修羅場のような場面なので、同じ体勢でもラブコメとは色合いが違う。
「妹と言っても、私は連れ子だから、兄弟じゃないし。血がつながっていたらもっと無能な女だったと思うけど」
嫌味たっぷりなまひるの言葉には毒矢のような威力がある。
「前からお前の言動には違和感があったんだよ。大人びているし、時々冷めた目をしているし、子供らしくないというか。本当は普通の18歳として生活したいのではないのか?」
「子どもを演じることって気楽で楽しいからそれでいいけれど。アサトも良い人ぶっているあたり、本当は鬱憤がたまっているんでしょ? 普通の男みたいに弾けたことも楽しいこともなく国のために記憶をけなげに集めているなんて、ばかげているわ。あんな少しずつ集めてもたいした力にはならないのにね」
痛いところを突かれたように思うアサトは仕方なく反撃する。
「僕はできることをやっているだけだ。それに、夢香のことは好きだと思っているよ」
「でも、ヨルトに取られそうじゃない? アサトフラれちゃうんじゃない?」
するとアサトが珍しく怒りの表情を見せ、壁に両手をつけて、顔を近づけて、まひるに向かって睨みつけた。
「アサトの怒った顔初めて見た。そういう顔もするのね」
そう言うと、まひるは10歳の姿に変化して、逃げてしまった。
「私は、昼の女王になるんだから、手荒な真似はしないでよね」
かわいい声でそんなことを言いながらまひるは自分の部屋に戻ったようだった。
アサトはこれからのことを悩んでいた。夢香が来れないとしたら、他の能力が高い女性を日本のどこかで探してみるか。場所を変えて店を開店するか。そう思いながらも、まひるがいないと虹色ドリンクが作ることができないという事実に直面していた。そして、ヨルトが夜の王を拒むのであれば別の誰かを探すしかないのか、そういったことで悩みあぐねていた。迷宮入りと言ってもいいかもしれない。しばらく宮殿の廊下の椅子に腰かけてアサトは沈黙を続けた。
「能力の高い人間を探す手伝いをしてもいいよ」
しばらくすると同じ場所に戻ってきた子供の姿のまひるが提案した。
「ヨルト、夜の王になりそうもないし。別な能力ある人間を探してみようよ。虹色ドリンク作ってあげるから、そのかわり、ちゃんと私にバイト代支払いなさい」
「僕は夢香を諦めない。彼女は時の国の王の一人として時間を操る能力を持っている。だから、少し時間を置いたら、もう少しここに来てもらえるように説得する」
「それは、国のため? 自分のため? あの子の能力が欲しいの? あんなに時の力を持つ人間、そうそういないわよね」
「自分のためだよ。時の力はすごいと思うけれど、一人の女性として大切だと思えるんだ」
「アサト、もっと賢い男だと思っていたけれど……これでは時の国の末路も見えたわね」
「好きなんだから、仕方ないだろ」
「珍しい。あなたが感情をあらわにするなんて」
「もう一度告白するの? アサトのことだからプロポーズかな?」
「もう少し、彼女の様子を見て告白と謝罪をしてみるよ」
「チキンよね」
「なに……?」
アサトが珍しく睨みつける。
「あの子のこととなるとすぐムキになるのね」
「これからは、まひるには敬語は使わない、元々同じ歳だしな」
ぶっきらぼうな物言いのアサト。
「ほんと、アサトって子供みたい」
こどもの姿の18歳のまひるに言われたアサトは、少し拗ねているように思えた。これからは、夢香に会うために誘ってみよう。店以外の場所でデートに誘ってみよう。そして、ちゃんと謝らなければいけないとアサトは心に誓うのだった。
「どういうつもりだ?」
珍しくアサトがきつい口調で問いただす。
「いつもの丁寧語じゃないのね、怖いよアサト」
まひるはいつもとは違う兄の表情に気づきながらもさらっと会話をする。
「怖いのはお前のほうだ。平気な顔をして銃を使って怪我をさせるし、人を騙すし、とんでもない妹だ。丁寧語を使う義理はない」
壁ドンといわれる体勢になっているが、ここは修羅場のような場面なので、同じ体勢でもラブコメとは色合いが違う。
「妹と言っても、私は連れ子だから、兄弟じゃないし。血がつながっていたらもっと無能な女だったと思うけど」
嫌味たっぷりなまひるの言葉には毒矢のような威力がある。
「前からお前の言動には違和感があったんだよ。大人びているし、時々冷めた目をしているし、子供らしくないというか。本当は普通の18歳として生活したいのではないのか?」
「子どもを演じることって気楽で楽しいからそれでいいけれど。アサトも良い人ぶっているあたり、本当は鬱憤がたまっているんでしょ? 普通の男みたいに弾けたことも楽しいこともなく国のために記憶をけなげに集めているなんて、ばかげているわ。あんな少しずつ集めてもたいした力にはならないのにね」
痛いところを突かれたように思うアサトは仕方なく反撃する。
「僕はできることをやっているだけだ。それに、夢香のことは好きだと思っているよ」
「でも、ヨルトに取られそうじゃない? アサトフラれちゃうんじゃない?」
するとアサトが珍しく怒りの表情を見せ、壁に両手をつけて、顔を近づけて、まひるに向かって睨みつけた。
「アサトの怒った顔初めて見た。そういう顔もするのね」
そう言うと、まひるは10歳の姿に変化して、逃げてしまった。
「私は、昼の女王になるんだから、手荒な真似はしないでよね」
かわいい声でそんなことを言いながらまひるは自分の部屋に戻ったようだった。
アサトはこれからのことを悩んでいた。夢香が来れないとしたら、他の能力が高い女性を日本のどこかで探してみるか。場所を変えて店を開店するか。そう思いながらも、まひるがいないと虹色ドリンクが作ることができないという事実に直面していた。そして、ヨルトが夜の王を拒むのであれば別の誰かを探すしかないのか、そういったことで悩みあぐねていた。迷宮入りと言ってもいいかもしれない。しばらく宮殿の廊下の椅子に腰かけてアサトは沈黙を続けた。
「能力の高い人間を探す手伝いをしてもいいよ」
しばらくすると同じ場所に戻ってきた子供の姿のまひるが提案した。
「ヨルト、夜の王になりそうもないし。別な能力ある人間を探してみようよ。虹色ドリンク作ってあげるから、そのかわり、ちゃんと私にバイト代支払いなさい」
「僕は夢香を諦めない。彼女は時の国の王の一人として時間を操る能力を持っている。だから、少し時間を置いたら、もう少しここに来てもらえるように説得する」
「それは、国のため? 自分のため? あの子の能力が欲しいの? あんなに時の力を持つ人間、そうそういないわよね」
「自分のためだよ。時の力はすごいと思うけれど、一人の女性として大切だと思えるんだ」
「アサト、もっと賢い男だと思っていたけれど……これでは時の国の末路も見えたわね」
「好きなんだから、仕方ないだろ」
「珍しい。あなたが感情をあらわにするなんて」
「もう一度告白するの? アサトのことだからプロポーズかな?」
「もう少し、彼女の様子を見て告白と謝罪をしてみるよ」
「チキンよね」
「なに……?」
アサトが珍しく睨みつける。
「あの子のこととなるとすぐムキになるのね」
「これからは、まひるには敬語は使わない、元々同じ歳だしな」
ぶっきらぼうな物言いのアサト。
「ほんと、アサトって子供みたい」
こどもの姿の18歳のまひるに言われたアサトは、少し拗ねているように思えた。これからは、夢香に会うために誘ってみよう。店以外の場所でデートに誘ってみよう。そして、ちゃんと謝らなければいけないとアサトは心に誓うのだった。