「陽人さん、私たちってもう何年になるのかな?」
「えっ? そうだなぁ、婚約したのが結花が18の冬だろ? ちょうど9年前になるか」
ハンドルを握る陽人先生が答える。
そう、このお二人は恋愛というシーンでも私たちの大先輩でもある。
私と全く同じ、高校2年生の担任の先生と生徒という関係からスタートして、何度も涙を流しながら同じこの日に人生の約束を交わした。
だから、私のことを自分のことのように理解してくれたし、一番力強く私たちの背中を押してくれた。
二人が本当に愛し合えるなら、乗り越えられない問題じゃないと。
でもね、私たちのプロポーズが横浜のナイトクルーズの船上だったのね。それでも私には忘れられない思い出だけと、結花先生たちはニューヨークの夜景がバックだって。そのスケールの大きさにはかないっこない。
それだけのことをやっていれば、私たちふたりのことは驚くこともなかったんだろうなぁ。
こんな過去を持つ私たち二組にとって、今日の12月24日という日は本当に大切な日になるんだよね。
だから、この日に結花先生たちとお出かけすることは、何かがあると凄く楽しみにしていた。
「いろいろ、あったわね……」
「はい……」
国道を走りながら、後部座席で外を眺めている私たち。
何故なんだろうね。私たちにはどうもこの時期にいろいろとイベントが発生してしまうようだ。
「こんな遅い時間に着いたら迷惑じゃないんですか?」
「大丈夫。その辺も話してあって、部屋とお風呂は用意しておいてくれるってことになってるから」
「少し寝ていていいぞ。ふたりとも今日は忙しかっただろうし」
街を外れて郊外になってくると、イルミネーションもぐっと少なくなってくる。
時計を見ると、予定どおりに走ったとして半分を来たくらいかな。9時を回った頃だ。
「でも、せっかく花菜ちゃんと一緒にいられるんだから、寝てなんかいられないって」
結花先生がそう言って、私の手を握ってくれた。
「はい、そのとおりですっ」
「まったく……。まぁいいや」
陽人先生は笑いながらアクセルを踏み込んだ。