「それでは、皆さまご案内がありますまでお部屋の方でお待ちください」

 葬儀場の係員に言われて、一団が移動していく。

 そんな中、俺は彼の場所に移動した。

 どちらかと言えば年配者が中心になる葬儀会場、しかも告別式が終わってだから、火葬場まで来るのは親族しかいない。今日集まった顔ぶれの中で彼は一番若いのではないだろうか。

 今日集まっているこの顔ぶれだって、普段は話すどころか存在を知ることもない。正直、親族と言ってこんなに集まるものかと呆れてしまったほどだ。

「おつかれさん」

「あ、陽人(はると)先生おつかれさまでした」

 確か、話ではまだ20代後半だったはずだ。まだ結婚式の方が多くて、葬式なんてそんなに出ることもなかったと自分の経験からして思う。

「そんな、固いなぁ。もう初めて会ったような関係じゃないのに」

「仕方ないですよ。これだけ年が離れていれば」


「だって、花菜(かな)ちゃんとは7つだろ? それと大して変わらない」

「歳で言えばそうなんですよね」

 そこでようやく彼も笑ってくれた。

「いつ、打ち明けますか?」

「もう少し伏せておくか。あのふたりきっと喜ぶだろうな」

「間違いないですよ。花菜なら泣いちゃうんじゃないかな」

結花(ゆか)だって同じようなもんだ。どうせやるなら、ちゃんと場所を設定しないと面白くないな」

「じゃぁ、場所なら落ちついたことろでやりましょう。あとは日程ですね」

「そうだな。まだしばらく時間がある。それでも話すか」

 俺たちは指定された部屋に向かって歩き出す。


 この日から、俺たちを取り巻く世界が一気に広がったことを、そのときはまだ二人だけの秘密にしておいた。