そんな日々の中で、俺はあいつに再会した。



「関くんの指導は仁科くんにお願いしてるから。わからないことあったら彼にきくようにしてね」
「え」
「そういえばふたり同じ中学校なんだって? それなら関くんも安心だね、よかったよかった」


人生なにがあるかわからない───なんていうのは、俺の人生においては素晴らしく要らない展開だったと思う。



「俺のこと知ってる?」
「……仁科翼だろ?」
「ああ、うんそう。で、そっちは関陽介(ようすけ)
「知ってんだ」
「知ってるでしょ。学年でも飛びぬけて荒れてたじゃん」



高校二年生。家から近いファミレスのバイトの面接に行き、即日採用された。

初出勤の日、俺は、中学時代一方的に避け続けてきた男と再会を果たした、というわけである。



「関、中学の時より落ち着いたよね」



仁科にそう言われた時、俺は咄嗟に耳元を隠した。仁科の瞳に、今の俺がどう映っているのかわからなかったが、欲求だらけの黒歴史を掘り起こされるのは単純に恥ずかしかった。


「お前に関係ねえだろ。知ったように言ってんなようぜえから」
「ごめん、思ったこと言っただけだったんだけど」
「それがうざいって言ってんだろ死ね」
「ハハ。死ねは言い過ぎかもね、関」


やけくそで開けたガタガタのピアスホールが、情けない俺を物語っている。

もっと言えば、「変わったね」ではなく「落ち着いたよね」だったことが、俺にとってはどこか後味が悪かった。俺の暴言を笑って流すその態度すら、むかついて仕方がなかった。



仁科はとても仕事ができるやつだった。

とにかく業務においての効率が良く、店長をはじめ他の従業員も、何か問題が起きても仁科に頼れば大丈夫という安心感を持っているような気がした。学生というだけで下に見てくる口うるさいパートのババアも、唯一仁科にだけはやさしく、甘かった。


一方の俺はというと、もともとの目つきが良くないことと愛想がないことが相まって、俺宛てにクレームが来て店長からやんわり注意を受けたり、混雑した時に仕事の優先順位がわからなくなってパートのババアにねちねち文句を言われたりを繰り返していた。


できないわけじゃないけれど、仁科のように頼られるほどできるわけでもない。

それでも、仁科は俺がひとりでちゃんとできるようになるまで同じことを何度も教えてくれたし、失敗した時はたくさんフォローしてくれた。



人当たりの良い爽やか好青年という仁科へのイメージは、中学の時から変わらない。

仕事も顔も申し分がなく、そんな完璧人間と同じ空間で仕事をするのは、助かる反面、劣等感を掻き立てるのだった。