「うちに来る日の夜は、何食べたい?」
黙り込んでしまった董子に、母が何事もなかったみたいに問いかけてくる。
「じゃあ……、肉じゃがと豚汁」
ちょっと考えてから董子が答えると、母が笑った。
「うちを出て行ってからは、そのリクエスト多いわね。うちにいるときは『また〜』って文句ばっかり言ってたのに」
「そんなことないと思うけど……」
「そう?」
「そうだよ。とにかく、木曜日の夜には帰るから」
「じゃあ、いちおう夕飯の用意はしとくけど。無理はしないでね」
「無理なんかじゃないから」
「はいはい。じゃあ、待ってるから」
「うん、じゃあね」
そんなやりとりで、董子は母との電話を終えた。
それから数日が過ぎた木曜日の夜。董子は18時頃に仕事を終えて、店を出た。
帰宅時間を母に連絡しようとスマホを取り出すと、ラインのメッセージがいくつか届いている。そのなかに、恋人からのメッセージを見つけた董子はドキリとして。まず一番に、彼からのメッセージを開いた。