
作品番号 1690683
最終更新 2023/09/22
私が初めて出会った時の君は、もう死んでいたの?それとも、もう幽霊だったの?
満月が満ちて欠けていってしまうあの日。君は君の全てをこの満ち欠けのために削ったよね。満月の満ち欠けの“真実”と“運命”を、一人で背負えるはずがないというのに…。
月の満ち欠けって、よく聞くけれど実際はあまり見たことがないもの。月が満ちて、欠けていく様を私は人に説明できた試しがない。
──…ただ、ひとりだけ。死にゆく運命にあった男の子だけがその原理を私に語ってくれた。
『こんなこと言ったらいつもみんなに引かれるんだけど、君は引かないんだね』
引かないよ、絶対に。
君をバカにして笑う奴がいたらメッタメタのギッタギタに殴ってやるんだから。月の満ち欠けの原理を語った君は最後、姿形なくこの世界から消えてしまうなんて───。そんなこと、一体誰が気づけただろうか。
月が満ちて、消えていく理由には残酷すぎ、る、“真実”と“運命”が存在していた。もう一度だけ、生まれ変わりたい。そしたら今度こそ、君を救えるから。君が独りじゃないんだってこと、伝えられるから。死んでほしくない、って言えるから……。
“運命”なんて、信じていなかった。だけどあの日、あの満月がどんどん欠けていく光景を見たあの日、私は確かに、“運命”という名の残酷さを、知った───。
「俺、太陽のもとには出られないんだ。俺が外に出れるのは、月の光が輝く満月の夜だけ」
「だから、ゆう。満月の夜だけ、俺を外に連れ出して」
君のその言葉が、私たち二人の別れを告げていることにあの時は全く、気づいてもいなかったんだ───。月が満ちて、消えてしまう前に。私は君に、どれだけの幸せを分け与えることが出来たのだろうか。
- あらすじ
- 高校一年生のゆうは消えぬ傷を抱えたまま、本当の自分を受け入れられずに生きてきた。そんなゆうの前に、ある日突然白銀の髪をした綺麗な少年が現れた。渚は出会ってすぐにゆうに好きだと告白し、二人の不思議な関係が始まる。渚とゆうが出会った本当の理由。月の満ち欠けの真実と運命を背負ったたった一人の少年が、この冬、愛する人のために彼の全てを捧げる。そこには、優しい嘘と真実と、残酷すぎる運命が待ち受けていた──。