約10分の動画を見終えると、心のどこかスッキリしたような気がした。

 夜空いや2人の全てを知れた気がしたからかもしれない。

 リビングに行こうとすると、またもや女子会をしているようだ。
 
 今夜、李月と陽翔は居ない。

「オーストリアに行ったら、朝日とは離れ離れね。」
「それは私もだよ。一星と・・・不安だなぁ。」
「分かるわ。ヨーロッパの女性なんてみんな綺麗だし、先輩とかモテるでしょう?やっぱり不安になるわよ。」

 不安になるのは俺も同じだ。

 今は留学に必死でろくに思い出が作れていないし、なんせ欧州の男性はイケメンだ。

 俺なんて歯が立たない。

 桜の木が青々しい。

 今ではコンクールでも上位層にはいるようになった。

 先生からも「大分入れる確率が上がった」と言ってくださるようになった。

「まぁ、こんなことで不安がってちゃダメよね!今度のコンクールも、次の大会も、勝つのは私よ。」
「あはは!なんか…お姉ちゃん変わったね。前よりも、強くなった気がする!」
「じゃなきゃ困るわ。私はもう逃げないし、負けない。きっと…彼に会えたからかしら。」

 目を大きくした後で、真昼はそっかぁ、と呟いた。

 おやすみ、と言い合う2人。

「あ、朝日…」
「真昼、ごめん。」
「何謝ってんの?…あのさ…ひとつ、さっきの話さ、間違ったこと言った。」
「?」

 私の知り合いには何度も壊れて脆くなっても、強くなった人がいる。

 それだけ言うとその場から去った。