その映像には夜空の姿が映っていた。
「お姉ちゃん?入っていい?」
「ま・・・真昼・・・・・・」
今よりもか細い声で、小さくそう言った。
「調子はどう?」
「分からない・・・」
「そっか。目は?」
「何も・・・見えない・・・」
見る限りこれはあの出来事のすぐ後のようだ。
「もう・・・私は何もしない・・・ずっと1人で・・・1人で死ぬ・・・」
「お姉ちゃん・・・大丈夫だよ。私はお姉ちゃんとずっと一緒。1人になんてしないよ。」
「真昼・・・」
胸が苦しくなる一方だ。
ひんやりと冷たい南極の海の中みたいだ。
次の場は俺も知っているやつだった。
「夜空、あんたなんかがいなければ、私は優勝出来たのに!なんであんたが全部持っていくのよ!半分の出来損ないのくせに!」
「っ!」
半分の出来損ない・・・それはきっと一卵性双生児の夜空と真昼のことを言ってるのだろう。
向かいに見えるのは夜空の天敵、薫子。
「な、で?私たち親友でしょう?」
「は?何勘違いしてんの?あんたのとこ親友だなんて思ったことない!」
その後すぐに早気を発症。
夜空と明日香、薫子は仲良し3人組だったと聞いている。
そんな人に裏切られてしまったのだ、無理もない。
早気でまともに矢が当たらず、遂には吐くようにもなっていた。
結局、夜空は弓道の強い高校ではなく、学力優先の高校に進路を変更した。
明日香はそんな夜空を傷つけた薫子が大嫌いで、夜空側についた感じだ。
何をもって「壊れる」とするかは分からないが、俺の解釈でいいなら俺も1度壊れている。
「息子じゃない」と「母さんと呼ぶな」と言われた時、俺は役が分からなくなった。
同じ言葉を何度も反芻した。
「だったら産むな」と「さっさと負けを認めていなくなれ」と何度思ったか。
これを壊れていないと言えるのか?
分からない、が正解だ。