「41にもなって、こんなに泣くと思ってなかった⋯」
「それだけのことがあったんでしょ?何があったの?少し話してくれないかな?」
「でも、今更縋っても、申し訳ないし⋯」
「もう十分縋られてますが?」
「うっ⋯」

 少し目を泳がせると、小さく鼻を啜った、

「旦那が⋯夜空を殴ってたの⋯」
「!!」

 夜空は李月の上の娘さんだ。

 確か双子で、歳は朝日と同じだったはず。

「私と下の子には何もしてなかったんだけど、昨日家に帰ったら⋯夜空が馬乗りされて血だらけで⋯!」
「もういいよ。今、2人は?」
「夜空は入院してる⋯真昼は両親に預けてるわ。退院次第夜空もそうしようと⋯」
「分かったよ、 話してくれてありがとう。」

 俺は彼女じゃないからわからないけれど、李月の心に刻まれた傷は深い。

「ごめんなさい⋯陽翔くんだって、傷が癒えてないでしょうに⋯」
「俺のことは気にしないでよ。⋯とりあえずしばらくは実家にいた方がいい。携帯も解約して、新しいのにして。離婚届は?」
「明日、そのことについて両家で話すって⋯」

 できるなら、李月をその場に行かせたくない。

 そんなことできないのは分かってるんだけども、どうしてもその男が許せない。

「私⋯もうあの人に会いたくない⋯」
「李月さん⋯」

 その日は俺が彼女を実家まで送っていった。

 その時におばさんに言っておいた、「明日お邪魔してもいいですか?」と。