「父さん!」
「!?どうしたんだ?落ち着いて話すんだ。3人はまだ風呂に入ってるから。」
「父さん、俺、オーストリアに行かない。多分、オーストリアに行ったら、夜空とか真昼に甘えると思うんだ。1人で頑張りたいんだ!」
 
 熱意をしっかり受け止めてくれる。

 うんうん、と頷いてくれた。

「そうか。俺は朝日の思いを尊重するよ。さっき李月さんにやられたから、やり返すけど。ここもいい大学なんだよ?」

 王立の音楽大学、イギリスの名門だ。

「ここ、李月さんの母校なんだよ。ここもさっきと同じようなことが言えるけど、朝日の願いは叶えられるさ。」

 0.1%未満なのは変わらない、けど確信のない自信だけがあった。

「やってやるよ⋯!」
「いい顔してるね、朝日。やるんだ、ベテランなんて怖くないよ?プライドを壊せ、潰せ。それでこそ、暁陽翔の息子だ。」

 目が覚まされた気がする。

 暁時、太陽は朝日となって昇るのだ。

「こっちも負けないわよ、朝日?」
「夜空⋯もう俺は逃げない。」
「さっすが!陽翔くんの息子さんね!イイコ。」

 父が団長だからここまで息子を意識するのか?

 さっきからずっと考えてる。

「なんで、俺を父さんの子って強調して⋯」
「なんでって、陽翔くんは小学生時代からコンクール総なめ、オーストリアの名門国立音大を日本人初首席卒業したすごい人なのよ?!」
「「「えっ⋯ええ〜〜!!!」」」
「そんな凄くないよ。李月さんだって同じようなことしてるじゃないか。」

 ため息が出る。

 もっと早く言って欲しかったものだ。

「学生時代はよく張り合ったわよねぇ。懐かしいわ。」
「えっ?2人って元から知り合いなの?」
「えぇ、私の方が3つ上なのだけど、よく音楽祭なんかで顔を合わせていたわ。」
「俺はね?前々から口説いてたんだよ?なのに、子供の戯言みたいに『はいはい』みたいにスルーして。」

 もういいや、両親のイチャイチャは見たくない。

「夜空、髪乾かしてやるよ。」
「ありがとう。あの2人は放っておきましょう。」
「賛成!」

 きっと俺らは0.1%未満に入ったら、両親を超えたことになるだろう。

 でも、最低限俺は天才じゃない。

 これからどんな努力も惜しまない。

 それが俺の人生を左右するのだ。