2人は日本で1番大きくかつ有名なオーケストラのメンバーで、陽翔は団長を務めている。

 幾度となく「なんで(こいつ)が団長なんだ」と頭を傾げたが、それだけ頼りになる、らしい。

 無論、俺はそんな姿見たことない、むしろ頼りない姿は見飽きるほど目にした。

 なんせ、家を不在にすることが多すぎるが故、不倫された男だ。

「ねぇ、あさひぃ〜ハグしてよ〜」
「ぜってぇしねぇ。ほら、早く入んぞ。」

 ニコニコの李月を横にかなりしょぼんとしている。

 ちょっと可哀想になってきた。

「別に会いたくなかった訳じゃなくて。そのノリが苦手なだけで、普通に会えたのは嬉しい…から…」
「朝日…!うっううっ…!父さん、嬉しいよ…!」
「泣くな!ったく…!」

 通常運転だな。

 そして、李月と再婚して陽翔の調子も良さそうだ。

 ちなみになぜワゴン車なのかというと、2人とも専門とする楽器がまぁ大きいのだ。

 陽翔はコントラバス奏者、李月はバスクラリネット奏者だ。

 どちらも2人の体格にあった、最高のパートナーだろうな。
 
「それにしてもどうしたの?急に帰ってくるなんて。」
「実は帰ってくる、というか君らの卒業ぐらいまで近場での仕事が多くてね。一年と少しかな。だから、ついでって言っちゃ悪いけどそんな感じでね。」
「でも、冬休みが延長になったって聞いたし、しばらく顔を見てなかったから来たかったのもあるのよ。やっぱり家が安心するわ。」

 二人はホテル住まいを続けていた。

 そのためか家が落ち着くと毎回言っている。