「……」

 夜空にとっちゃ、嫌な思い出かもしれない。

「…すげぇな。」

 お世辞じゃない、自然と口から出た。

「は?何言って」
「だって、あんなに遠くの的を打つんだろ?1発当たりゃそりゃすげぇよ。俺ぜってぇムリ。」
「それな!私もムリだな〜。まず集中力が持たない。」

 たとえ1回戦敗退だとしても、全国の、だ。

 俺なんて県大会にも出たことないのに。

「できないことだってあるし、失敗することだってある。でも、夜空は、なんだっけ…なんか癖あったじゃん。それ克服しようと努力してここまでやってるんだ。あれはあれで『良かった』って思っていいんじゃね?」

 雫が頬を伝う。

「えぇ!夜空…?!嫌だったか?大丈夫か?!」
「大、丈夫よ…!ただ、嬉しかった、だけで...」

 自力で拭うと、俺に1発軽くビンタし、キッチンに戻った。

「!大丈夫そう?」
「あぁ、別に。そこまで痛くないし、これくらい日常茶飯事ですよ?」
「うんうん。」
「えぇ……」

 一星がうちに慣れるのはまだまだかかりそうだ。