自室から帰ってきた夜空は少し瞳が潤んでいた。

 ただ、そっとしておいてほしそうだった。

「今日は年越しそばを食べるから、夕食は軽めにしましょうね。」
「ねね!見てよこれ!高一の時のお姉ちゃんの全国大会のやつあったの!」
「全国!?夜空ちゃんって何部だっけ?」
「弓道です。5歳から今まで。目指せ全国制覇なのだけれど、なかなか…ね。」

 チャンスはあと1回だ。

「俺、それみたい。」

 その日俺は用があり行けなくて、見れていない。

「嫌よ。恥ずかしいもの。しかも高一って1回戦落ちしたやつじゃない。」
「じゃあ高二は?」
「決勝で落ち。焦ったわ、今度こそ…」

 勝手にDVDを再生する。

「ちょっと…!」

 向こうの夜空は高校初の全国でガチガチだ。

 不運にも隣には夜空の絶対的ライバルがいた。

 うちの高校は特別弓道が強いわけではないので、夜空は個人での出場だった。

 全4射、そのうち半分つまり2中すれば2回戦進出できる。

 始めの1射は的の真ん中少し右に的中。

 「よーし」という掛け声が聞こえる。
 
 ただ、2射目を外すと崩れた。

 顔が焦りの色に染まる。

 結果的に、4射1中で、1回戦敗退となってしまった。