そして小6のとき、ついに爆発した。

『こんなの、私のフルートじゃないわ!』

 思いっきり相棒を床に叩きつけたのだ、相棒を愛する父の前で。

 相棒は金属棒と化した。

『…おい。何をしている…!』

 無論、怒るだけではすまなかった。

 母に気づかれるまでの数分、殴られ続けた。

 体よりも頭を中心に、ずっとずっと。

 耳にも目にも構わず、ずっとずっとずっと…

 それがきっかけで母は離婚を決意し、暴力は終わった。

 暴力は私にだけだったようだ。

 確かにフルートを投げたのは私で、悪いのも私。

 ただ、その時だけ、「私は何も悪くない」と、言った。

 目をしこたま殴られたせいで、裸眼じゃあほとんど何も見えなくなってしまった。

 この箱には投げたあと直してもらった相棒が入っている。

「ごめんね…」

 無機物に謝るなんて、変かもしれない。

 でも、私にとっては相棒なのだ。

「そろそろ夕食の準備を…また来るわ。」

 いつかまた、吹けたらいいな…