「俺…もうダメ…」
「先輩ダウンが早ぇな。まだまだあるぞ?」
「この…!最近運動できてねぇんだよ!」
「知るか。ほら、次の休憩はあと1時間半後だ。」

 完全に尻に敷かれた一星、可哀想に。

 ちなみに女子たちは担当が終わったので、大掃除は終了である。

 あとは物置の断捨離だけ。

「あぁ、もう。先輩は寝てていいですよ?ただ、ぜってぇ真昼に触んな!俺だって夜空といたいんだからよ。」

 ゴミ袋を片手にマスクをして言う。

 はーい、と不満そうな返事が聞こえると物置に入った。

 ここ数年で物置がいっぱいになってしまった。

 なんせ義母が各地のお土産を送ってくるのだ。

 捨てられずいたら、断捨離する羽目になった。

「うわ、これウィーンの土産だ。これ、毎年来るからな…いっか。あと…っ!」

 しばらく足を踏み込んでいなかった奥へ進むと、あるものを目にする。

 チェロだ。

 壁に立てかけてある、古いチェロ。

「兄さんの…」

 兄夕日はバスケもできたが、部活はオーケストラ部だった。


『にぃちゃん!今日も弾いて!』
『いいよ、朝日の好きな曲を弾いてあげる。』

 父の影響でチェロを小さい頃からやってて、コンクールで何度も優勝するほどの名手だ。

 いつも寝る前に弾いてくれて、そのまま寝落ちするのがお決まりだった。

 それで俺もチェロをやってたっけ。

 兄が亡くなるまで…

 亡くなってからは、チェロを触ること自体こわくなってしまった。

 自然と弾かなくなってしまった。

 今は部活でバスケをして、放課後はストリート音楽を楽しむ日々。

 無意識に足が前へ進む。

「また…後でいいか。」