ただそのドキドキは一瞬にして消えた。

 弓を引いて狙いを定めすぐ、スパンという音の後、矢が的の上で揺れる音がした。

 矢は的の本当に中心、10点を指している。

「えっ…!?は?」
「うん、これでいいわ…」

 その後もその矢を囲うように矢を射っていく。

 最後は矢でできた円の中を射る。

「完璧ね、さすが私。さぁ、あなたの番よ。私は100だから、1射でも外したらあなたの負け。」

 高みの見物、というのはこうゆうことだろう。

(あぁ、怖い怖い…)

 プレッシャーが山積みの逆ナン女。

 ふっかけた相手が悪かったな。

 ガタガタのまま矢を引いた。

 狙いが定まらない。

 やけになって弦を離すが、指したのは5点。

「はい、終わり。私の勝ちよ。朝日、もう行きましょう?」
「そ、そうだな。」

 悔しそうに顔を歪めた。

「あんた何者よ!絶対初心者じゃないでしょ!」
「……私は、ある高校の弓道部で個人全国出場したことある、ただの初心者よ。」

 あくまでアーチェリーは初心者。

 アーチェリーと弓道は似ているが違うものだ。

「今回できたのはたまたまよ。それじゃあ、また会えるのを楽しみにしているわ。」

 最後彼女は見下すような笑みを向けた。

 流石『黒い彼岸花』と言うべきか。