鏡の前でシュッシュッと音を立てる。

 あんまりかけても臭くなるだけだ、少しだけでいい。

 それにしても…真昼にコーディネイトを頼んで良かった。

 夜空はファッションセンスあるからいいけど、思春期男子はそうゆうのに疎いのだ。

 前日、聞いといて良かった。

 今日はグレーのパーカーに黒のジャンパー、黒いダメージジーンズだ。

 旅行の時とかに真昼に聞いたやつをいつもコソッとメモっている。

「遅くなったな。」
「大丈夫よ。」

 黒のアシンメトリーネック(って言うらしい)セーターに白いレーススカート、ベージュのパンプスの夜空。

 そういえば、いつから夜空に見上げられるようになったのだろう?

 会った時は俺の方が小さくて「可愛い」とバカにされたものだ。

 今ではパンプスを履いていても俺の背に届かない。

 けして夜空が小さい訳では無い、むしろ女性の中では大きい方なはずだ。

 過ごした時の長さを感じた。

 そして少し嬉しかった。

 上から見られる夜空は、見上げるよりも可愛いから。

「ははっ!」
「何を笑って…?」
「いや、何でもない。ちょっと思い出し笑いしただけだ。」


『あなた、身長いくつ?見る限り私よりも小さいけど?』
『中一はこんなもんだよ!』
『で、?いくつ?』
『ムッ……156…』
『ふっ、私より10cmも小さい…ふふっ…!』
『これから伸びんだよ!』(見てろよ…!)